56 沼ノ又の大蛇〔金山町〕

管理番号5124 台山

 今ではほとんど見られなくなった光景かも知れませんが、祖父母などから昔ばなしを聞く子どもは、どんな想像をめぐらしながらその話を聞いていたのでしょうか、もしかすると「まんが日本昔ばなし」 以上の ワクワク があったのかも知れません。
 生れた時には既に祖父母が亡くなっていた私には一寸羨ましくもあり、残念でもあります。

 桃太郎・かぐや姫・舌切り雀・猿蟹合戦等、広く子供たちに知られたものもあれば、一地域を舞台にその地域だけに伝わるものもあるようです。

 その一つが金山町の沼ノ又に伝わる「沼ノ又の大蛇」の昔話かもしれません。

 その沼ノ又は、昭和44(1969)年8月の大水害により集落全体が移転をよぎなくされ大塩に移り、現在沼ノ又集落は地形図上からも消えてしまいましたが、そこはその後植林が行われ、今は立派な杉が育っているとの事です。

 集落が無くなって五十年以上が過ぎたこともあり、町役場を訪問しお聞きしましたが、又そこで紹介頂いた方も具体的な舞台となった場所は判りませんでした。やっと五人目の方が水害まで当地に居住していたことが判明しました。
 その目黒政一さんと秀雄さんのお二人にお話しを伺うことができました。

 幸運でした !

 沼ノ又の大蛇の話とは・・・
 さて、沼ノ又の南西拾数町の所に 台山 という山がある。この山の麓に「沼ン田」という小沼がある。四方山に囲まれたお椀の底のような所に出来た沼で、水の出口がない不思議な沼である。沼の周囲にはブナやトチの大木が繁茂し、昼なお暗い鬼気せまる所である。したがって、村人でも春にゼンマイやワラビ取にいく外、あまり近づかない所である。
 ところで、沼のほとりには沢山の葦(ヨシ)が生えているが、ある年新遠路の百姓がヨシ刈りに来た。スダレを作る材料集めである。大分刈ったので一服しようと思い、大きな倒れ木に腰をかけタバコを吸っていた。するとその大木が動き出したのである。これは大変だと思って気がついたら、それは大蛇(オロチ)だった。大蛇はタバコの煙でのたうちまわり、苦しみだしたのである。男はびっくり仰天、あわてふためいて家へ逃げ帰った。
 それから間もなく天候は急変し、大暴風雨となった。沼ノ又の家々の屋根は吹きとばされ、障子は骨ばかりとなった。それは大蛇が沼から逃げ出し、越後南蒲原郡吉が平(ヨシガヒラ)に行く途中、荒れ空を起こしたものだといわれている。なお、新遠路の男は大蛇の毒気にあたり、家に帰ると間もなく寝こんでしまい、一週間ほどで死んでしまったという。
(金山の民俗 昭和60年12月20日 金山町発行 681~682ページ)

 山が大きく崩れた所を「蛇抜け」と呼ぶことがあるようです。教えていただいた 沼ン田 のある 台山 のふもとを地形図で見ると崩れやすい地形の様子がわかります。先人が後人達に注意を促すために、恐ろしい大蛇の話とし後世に伝えようとしたのでしょうか・・・?。

(2019年7月)